この記事では、エジプトの民俗芸術のーつ「タヌーラダンス」についてご紹介します。
「タヌーラ」とはアラビア語で“スカート”という意味です。この踊りはスーフィダンスに由来し、その起源はペルシャ系の詩人ジャラール・エルディーン・エルルーミーが創設したメヴレヴィー教団にさかのぼります。
エジプトのタヌーラダンスについてお話しする前に、まずはその元となった「スーフィーダンス(メヴレヴィー舞踊)」の基本情報を少しご紹介します。
現在エジプトで知られているタヌーラダンスの形になる前から、「スーフィー舞踊」または「メヴレヴィー舞踊」と呼ばれる精神的な踊りが存在していました。この踊りは現在もエジプトで広く見られますが、その起源はトルコにあります。
このスーフィーダンスは、「デルヴィーシュEl Darawish」(神様の前で無力な者)と呼ばれる、ジャラール・エルディーン・エルルーミーの教えの信奉者によって行われます。この踊りの目的は、瞑想し、神様に近づくことです。
踊りは両腕を空に向かって上げながら、絶え間なく円を描く動きが特徴です。
「デルヴィーシュ」という言葉はペルシャ語に由来し、「神様に身を委ねる者」「神様の前で無力な者」という意味があります。世俗的な欲望を捨てて、神様に近づこうとする人を象徴する言葉です。なお、「デルヴィーシュ」は男性の名前として使われることもあります。


スーフィーダンスの踊り手たちは、特徴的な衣装を着ます。白いゆったりとした衣装と、長い帽子(写真参照)が基本のスタイルです。
それぞれの衣装には象徴的な意味があります。
・長い帽子:墓石を象徴します。( 墓石とは、お墓の上に置かれる石(大理石や花崗岩など)で、亡くなった人の名前や生年月日・亡くなった日が書かれているものです。)
・黒衣:踊りの前に着用し、墓やこの世の闇を象徴します。踊り手は回転を始める前にこれを脱ぎ、魂の再生を表します。
この円を描くダンスは、太陽系の動きを象徴しています。中央のダンサーは太陽を表し、その周りで回る踊り手たちは太陽の周囲を永遠に回り続ける惑星を象徴します。
・白いゆったりとした衣装:死装束を象徴し、魂の純粋さや肉体からの解放を意味します。ゆったりとした衣装は、魂が広がるような自由な回転を可能にします。
・腰帯:精神的な規律や自己鍛錬を象徴しています。


ダンスは反時計回りに行われます。右手は空に向けられて、左手は下に向けられて、頭は少し傾けられており、神への謙虚さと服従を表しています。

その終わりのない回転は、自我(エゴ/Egoالأنا /الذات )を手放すこと(ファナー=自己消滅・死)を意味しています。
踊り手たちは次第に深い静寂の状態へと入っていきます。それは、深い集中、整った呼吸、一定のリズム、そして身体から解き放たれたような軽やかさを伴う精神状です。
では、スーフィーダンスとエジプトのタヌーラダンスの違いは何でしょうか。
トルコにおけるスーフィーダンスは、宗教的・精神的な儀式とされています。一方、エジプトのタヌーラダンスは、より民俗的でショー的な要素が強いのが特徴です。
回転する動きそのものは受け継がれていますが、実際には多くの違いがあります。まずは、エジプトの民俗タヌーラダンスの衣装について見ていきましょう。
· 一つ目の違いは衣装とその意味:
エジプトのタヌーラダンスの踊り手は、大きな円形に広がるスカートのような衣装を着ます。このスカートは公演の中でも最も重要な要素で、回転に合わせて大きく広がり、観客に強い視覚的インパクトを与えます。
スーフィーのダンス衣装はシンプルで主に白ですが、タヌーラの衣装は非常にカラフルです。
・赤:生命やエネルギーを象徴します。
・緑:祝福や精神性を象徴します。
・青:空の色を表し、清らかさや純粋さを象徴します。
・黄:光を象徴します。


2 つ目の違いは、タヌラ ダンサーは重ねたスカートを着用することがあるという点です。時々、一つ外して手に持ち、頭の上で回転させます。(写真参照)
ダンサーたちの高度なテクニックとダンススキルを披露するショーの一つです。
三つ目の違いは、公演の形式についてです!
タヌーラの舞台は、民族楽団の演奏とともに行われます。ミズマール(伝統的な管楽器)や太鼓の音に合わせ、宗教的な聖歌が演奏されます。公演時間は約10分から30分ぐらいです。
踊り手は非常に長い時間回り続けますが、倒れることはありません。それには優れたバランス感覚と、非常に強い身体的トレーニングが必要とされます。
タヌーラとスーフィーダンス(メヴレヴィーダンス)の違い:
■ タヌーラダンス(エジプト):
・民俗的な芸術パフォーマンス
・色鮮やかで装飾的な衣装
・祝祭的でエネルギッシュな雰囲気
・より速く、ショー性の高い動き
■ スーフィーダンス/メヴレヴィーダンス(トルコ):
・体系化された宗教儀式
・シンプルな白い衣装
・静かで瞑想的な雰囲気
・ゆっくりと規則正しい動き
エジプトのさまざまな劇場でタヌーラダンスを楽しむことができます。
特にラマダンの時には、ラマダン・テントでタヌーラダンスショーを数多く見ることができます。
タヌーラダンスは男性だけの踊りなのでしょうか?
エジプトでは、ほとんどの場合、踊り手は男性です。しかし最近では、女性が現代的なショーに参加するようになり、まだ一般的ではないものの、女性の参加はますます人気を集めています。
エジプトの民俗タヌーラダンスは、とても華やかで楽しい雰囲気に包まれています。特にラマダンの時期は一層盛り上がります。
タンヌーラダンスのスタイルもさまざまで、スカートにライトを取り付ける演出もあります。回転するたびに光が広がり、とても幻想的で印象的なパフォーマンスになります。
また、踊り手が観客と交流することもあり、実際にタヌーラのスカートを着けて回ってみる体験ができることもあります。しかし、見た目とは違い、スカートは意外と重く、簡単ではありません。
重いスカートを持ち上げながら長時間回り続けるには、高度な技術と相当な訓練が必要です。そこがタヌーラダンスの踊り手たちの大きな魅力です。
エジプトを訪れる時には、ぜひ一度タヌーラダンスショーを観てみてください。きっとその美しさと迫力に魅了されるはずです。





