
世界には、それぞれの国を代表する人形がありますよね。
例えば、ロシアには有名なマトリョーシカがあります。大きな人形の中に小さな人形が何体も入っている木製の人形で、豊穣や母性の象徴として知られています。

日本にも、人形(にんぎょう)と呼ばれるさまざまな種類の人形があります。実は今年の5月には日本人形の展示会にも行ってきました。その時の記事もあるので、興味がある方はぜひ読んでみてください。
https://egyptopia.net/ja/article/Ningyo-Cairo
今回は、日本ではあまり知られていないエジプトの代表的な人形を紹介したいと思います。
紹介するのは:
1- モウリド人形(عروسة المولد)
2- アラゴーズ(الأراجوز)
3- 人形劇『大きな夜(الليلة الكبيرة)』の人形たち
の3つです。
① モウリド人形(عروسة المولد):

まず紹介したいのは、エジプトでとても有名なモウリド人形です。
これは預言者ムハンマドの生誕祭(モウリド)のお祝いに欠かせない伝統的な人形で、子どもへのプレゼントや家族・婚約者への贈り物として親しまれています。
この人形の歴史はファーティミ朝時代までさかのぼります。当時、カリフの宮廷で砂糖を使った人形や馬の型が作られ、人々に配られたことが始まりと言われています。それ以来、モウリドのお祭りには欠かせない存在になりました。
モウリド人形の変化:
昔は砂糖人形が一般的でした。砂糖を煮詰めて木の型に流し込み、冷ました後に取り出して、カラフルな紙で飾ります。最近ではプラスチック製の人形も人気です。

チュールやサテンのドレスを着ていて、インテリアとして長く飾ることもできます。デザインやサイズも本当にたくさんありますが、昔ながらの形は今でもしっかり残っています。
ラマダンのランタンは最近キャラクターデザインのものも増えましたが、モウリド人形は昔からの姿を今でも見ることができます。モウリドの時期になると、お菓子屋さんや街中でたくさん並んでいるので、とても華やかな雰囲気になります。
② アラゴーズ(الأراجوز):
次に紹介するのはアラゴーズです。
アラゴーズはエジプトを代表する伝統的な人形劇で、手にはめて動かす人形を使います。
2018年にはユネスコ無形文化遺産にも登録されました。

人形の特徴:
・頭は軽くて丈夫な木で作られています。
・赤い長い服を着ていて、赤い三角帽子をかぶっています。
・昔は木製の腕で相手をたたく動きをして、観客を笑わせていました。
・演者は「アマーナ」という金属製の笛のような道具を口に入れ、独特で高い声を出します。

アラゴーズの役割:
アラゴーズは単なる子どもの遊びではありません。社会風刺を交えながら、人々の日常生活や社会問題をユーモアたっぷりに表現します。
もう一つの魅力は、観客との交流があることで、大人も子供も楽しめる点です。
昔話や民話をコメディー仕立てで演じることも多く、エジプトの文化を知ることができる伝統芸能です。

映画や芸術との関わり:
エジプトの有名な芸術家マフムード・シュコクمحمود شكوكوは、アラゴーズを使ったパフォーマンスで有名でした。
また、サーベル・アルマスリーصابر المصريは「アラゴーズの名人」と呼ばれています。
映画でも何度か登場していて、1989年には『アラゴーズ』という映画も公開されました。

③ 『大きな夜(الليلة الكبيرة)』の人形たち:
最後に紹介するのは、人形劇『大きな夜』です。
これはエジプトで最も有名な人形劇と言われています。作品にはたくさんの個性的な人形が登場します。
例えば:
- アラゴーズ
- カフェの主人
- 知識人
- 村長
- ひよこ豆売り
- おもちゃ売り
- 「マッダーフالمداح」と呼ばれる宗教歌の歌い手
- サーカスの力持ち役:力強いパフォーマンスや曲芸を披露する。
- 英雄「アンタル」をユーモラスに演じるサーカスの人気者
- 客役:コミカルなやり取りで会場を盛り上げる。
- 呼び込み役:観客を集め、演目の始まりを知らせる。
など、それぞれがお祭りの雰囲気を表現しています。

この人形劇は:
作詞:サラーフ・ジャーヒーン
作曲:サイード・マッカーウィー
演出:サラーフ・アル=サッカー
人形デザイン:ナーギー・シャーキル
という豪華なメンバーによって作られました。
おわりに
エジプトには、このほかにも「ボギーとタムタム(بوجي وطمطم)」など、テレビ番組で人気になった人形もあります。

モウリド人形は今でも毎年見ることができますが、アラゴーズは昔ほど見かけなくなりました。
最近では、「アラゴーズ」という言葉は人形の名前としてだけではなく、人をばかにするときの言葉として知られるようになりました。誰かに「アラゴーズだ」と言うと、「役に立たない人」や「ただのおどけ者」という少しネガティブな印象を与えます。
いつかまた、昔のようにたくさんの人がアラゴーズの人形劇を楽しめるようになったらいいなと思います。